戸井地区唯一の医院杉山クリニック、惜しまれ閉院 98年間地域医療支える

update 2026/3/23 07:08


 函館市東部の戸井地区で唯一の医院、杉山クリニック(浜町、杉山茂院長)が31日で閉院する。後継者が見つからなかったことなどが理由だ。昭和初頭から3代にわたって地域医療を支えてきたが、浜の住民らに惜しまれながら1世紀近い歴史に幕を下ろす。杉山院長(69)は「後継者を見つけることができなかったのが心残り。多くの患者や住民、スタッフに支えられて長く続けることができた。感謝している」と話している。

 祖父の金沢六郎さんが1928(昭和3)年、現在の場所に金沢医院を開業。55(昭和30)年ごろに父親の民雄さんが引き継いだ。93年に民雄さんが亡くなり、市立函館病院に勤務していた茂さんが、杉山クリニックと名前を変えて承継した。開院から今年で98年になる。

 戸井地区は人口約1900人の漁業の町。杉山院長は地域住民の「かかりつけ医」の役割を担ってきた。外来に訪れるのは1日50〜60人。心掛けたのは地域の実情に合わせた医療を提供すること。過去には交通手段のない住民のために往診(在宅医療)も行い、健康に気を配った。

 患者は漁師が半数以上を占める。「コンブ漁などは天気に左右されるため、天気の良い日は患者が少なく、雨の日に患者が多いなんていうこともあった」という。「何より患者の希望に沿った治療を心掛けてきた。やるべきことをやった32年間だった」と振り返る。

 医院を引き継いでから32年間で、休診日を除いて急に休診としたのはたった1日。5年前にめまいで動けなくなったときだけ。28日に誕生日を迎える杉山院長は、以前から70歳を区切りに閉院すると決めていた。「高齢になると判断力が低下し、ミスが多くなる。閉院は事故を起こす前のリスク管理」とし、「これまで事故もなく、無事終えることができた」と安堵(あんど)の表情を見せる。

 後継者探しは苦労の連続だった。「10年以上前から探し始め、多くの医師に声を掛けたが、結局良い返事をもうらうことはできなかった」と話す。1年前に閉院の貼り紙を掲示することを決断した。

 地域の患者は閉院を残念がる。漁業の室谷力さん(77)は杉山院長の検査がきっかけでがんを発見し、手術した。「(杉山)先生には多くの人が助けられた。自分もその一人。閉院は寂しい」と話す。西村キサさん(97)も「先生も看護師さんもみんな優しかったのでお別れはつらい。長生きは先生のおかげ」と感謝を口にした。

 1月には地域の現場で献身的な医療に取り組む「日本医師会赤ひげ大賞」の功労賞に選ばれた。「辞める年にいただいたご褒美で、花道になった。今まで働いたことの証拠、卒業証書だと感じている」と照れ笑いを浮かべる。妻の泰子さん(70)は「いつも患者さんに優しく接し、しっかり声を聞いていた。お疲れさまでした」とねぎらいの言葉をかけた。

提供 - 函館新聞社

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