ハコダテライフ 渡辺保史の 情報デザイン考現学 vol2

#004 はてさて、情報って何だろう?

一昨年、『情報デザイン入門』という本を出してから、色んなところで情報デザインについて話しをする機会がめっきり多くなった。「情報をデザインするってどんなこと?」「そもそも、情報って何なのさ?」ということを知りたい人は、意外に多いようだ。ってことで、ちょっとばかり基本に立ち返って考えてみよう。

ちなみにこの本が『情報デザイン入門』。平凡社新書、720円。来月には重版の予定。サポートサイトあり(http://www.kanshin.jp/skunk/

厄介なことに、実は、情報デザインってやつは、話しを聞いたり本を読んだだけじゃ「腑に落ちない」ところがある。「じゃあ、なんで本書いたりしてんのさ?」と突っ込まれると困るのだけど、要するに、通り一遍の、聞きかじりの知識だけで、情報デザインというものを「分かったフリ」してもらいたくない、ということだ。 よくある誤解の一つは、情報デザインってのは、カッコいいウェブサイトをつくるとかいう、なんか「デジタル」で「最先端」な感じのテクニックじゃないのか、というもの。いや確かに、そういう側面はある。いまあなたが読んでいるこの文章がのっかったウェブというメディアがこれだけ普及しなければ、情報デザインというのは脚光を浴びなかったからだ。 でも、別にプロのウェブデザイナーやデジタルクリエイターだけが情報デザイナーじゃない。早い話が、これを読んでいるあなたも、僕も、そして隣のオジサンやそこら辺の子どもだって、誰もが実は「自覚していない情報デザイナー」なんじゃないか。

たとえば、本棚だって本という情報の「かたまり」同士が意味の連なりをつくる、情報デザインの「現場」といえるだろう。

ちょっと考えてほしい。僕らのまわりに、「情報」はどういう風にある ? 新聞やテレビや雑誌やウェブのようなメディアから受け取ってるものだけが情報じゃない。ふだん友だちと交わしている会話の中に、街で見かけた看板に、家の中でお母さんが冷蔵庫のドアに貼り付けているスーパーのチラシに、公園のベンチに座った時に感じる木漏れ日の心地よさに、情報はある。そして、そういう色んなカタチをした情報と、僕らは無意識に接している。 今から40年ほど前、世界でおそらく初めて「情報社会」や「情報産業」という言葉を使い出した、梅棹忠夫(うめさお・ただお)という学者がいる。彼が、こんなことを言っていた。「この世界に情報は満ちあふれている」。最近、色んなデジタルツールがつながって、「いつでも」「どこでも」デジタルな情報を受け取ったりコミュニケーションができる「ユビキタスコンピューティング」が注目されるようになってきた。ところが、もともと情報はユビキタスなものなのであって、何を今さら、という感じもしてくる。 この世界に満ちあふれている情報を、どれだけビビッドに発見することができるのか? ふだんは眠っている「情報デザイン力」を目覚めさせるには、まずはこのことをしっかりと捉えておく必要があるんじゃないだろうか。

update 2003/7/114:44
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