防災工事か天然林保護か

update 2003/11/17 10:45

 【厚沢部】厚沢部町が管理する「土橋自然観察教育林」(レクの森・面積約89万平方メートル)が、利用者の安全確保と自然保護のはざまで揺れている。安全な森づくりに向けた防災工事を進める行政側と、ヒノキアスナロ(ヒバ)が自生する天然林の保護を求める一部住民の主張が真っ向から対立。住民側は同森に天然記念物のクマゲラが営巣している可能性を指摘し、事業を進める檜山支庁が工事の一時休止を迫られた。同支庁は17日にも営巣調査を行い事業計画を見直す方針だが、住民の生命・安全確保と自然保護の両立という重い課題に対して、行政と住民が互いに知恵を出し合う協働の森づくりが強く求められている。

 国が管理していた同森は2000年度に同町が取得。周辺で流木を含む土石流が発生するなど、不安定化した斜面で土砂災害が懸念されるほか、散策路沿いでは倒木が相次ぎ、利用者に危害が及ぶ恐れがあった。

 このため、同支庁を中心に「生活環境保全林整備事業」として2001―04年の4年間で土砂災害の防止工事や、倒木の危険がある枯木を間伐することで下草を育て、根によって土砂を安定させる「林相(りんそう)改良」を図ることにした。

 同支庁は年度ごとに住民説明会を開催。翌年度の事業方針を決めた。本年度は2カ所で土砂災害を防ぐ斜面安定化や木製土留めの施工、約6ヘクタールを対象とする林相改良などを行う予定だった。

 だが、同町鶉の笠間昭三さんらは「ヒバと南限のアオトドマツが共生する天然林は学術的に貴重で調査が必要。林相改良は森林の天然更新の機能を損なう」と、工事手法を批判する。同町などは「倒木の危険がある枯木を伐採して利用者の安全確保を図る必要がある。同森は土砂流出を防ぐ保安林でもあり防災機能を高める必要もある」と主張が対立している。

 議論は、同森入り口の旧営林署跡地の活用を検討するため同町が設置した「レクの森周辺整備構想策定委員会」(石川三郎委員長)にも飛び火。公募された委員の一部が、同森の整備事業を問題としたことで、「委員会の設置目的と違う」とする町側と対立。町内初の住民参加型ワークショップ形式の同委員会は協議を再開できない状態にある。



 一部住民と行政の対立に加え、同町などで活動する北海道森林鳥類調査室クマゲラ研究会(菊地政光代表)が、同森でクマゲラが営巣している可能性を指摘。同支庁に事業休止と生息調査などの検討を申し入れた。同支庁は、17日にも現地調査を実施。今後の事業計画を見直す方針を固めた。同森では以前からクマゲラの存在が知られていたが、小規模な治山事業には環境影響評価(環境アセスメント)が義務付けられないこと、支庁、町、住民の意志疎通不足も重なり、事前調査の必要性が十分に認識されていなかった。

 クマゲラの営巣が確認されれば、継続中の工事を除き、林相改良は縮小を迫られる。だが、多くの利用者がある同森で、倒木による人身被害や災害が発生した場合、同町の管理責任が厳しく追及されるのは必至だ。同町では「安全が確保できなければ立ち入り制限の必要も生じる」と懸念する。これに対して、笠間さんらは「利用者の自己責任を基本に置くべき。散策路を迂回(うかい)させたり、樹木をロープで支えるなど安全対策はある」と異なる主張を展開。主張は平行線をたどっている。

 両者の対立には「森林公園としてより多くの人に森林を楽しんでほしい」とする行政側と、「江戸時代から守られてきた天然林の学術的価値を尊重して、現状を維持すべきと」主張する住民側との認識のズレも根底にあるようだ。

 両者でボタンの掛け違いを解決しなければ、安全対策と自然保護は両立しない。住民、行政が同じテーブルに着き、互いに妥協点を見いだしながら、森の価値や位置付け、リスク管理を重視した森林利用のあり方などを議論し、官民協働での森づくりに取り組む必要があると言えそうだ。(松浦 純)

提供 - 函館新聞社



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