上ノ国ワシリ遺跡で擦文時代の遺構出土

update 2003/8/8 09:49

 【上ノ国】上ノ国町教委が同町汐吹で発掘を進めている「ワシリ遺跡」で7日までに、擦文時代後期(10―11世紀)の、鉄製品を生産した工房跡とみられる遺構が出土した。道南ではこれまで、同時代の製鉄に関する発掘例は極めて少なく、町教委は鉄の流通や、東北から本道にかけて勢力を広げた「蝦夷」(えみし)の実像を解き明かす手掛かりになるとみて注目している。

 同遺跡では直径2メートル前後の竪穴や柱穴などの周辺で、溶けた鉄が付着した「羽口」と呼ばれる、鉄を溶かすために使うフイゴの先端や、スラグ(製鉄の残りかす)などが出土した。

 町教委の斉藤邦典学芸員は「竪穴は住居には小さい。製鉄炉などは見つかっていないが、遺物の状況から、本州から持ち込んだ鉄を溶かして、鉄製品に加工した工房跡ではないか」とみている。

 一方、遺構は、日本海側に突き出た段丘上にあり、両側を沢に挟まれている。外部からの進入を阻む、深さ約2メートルの空壕(からぼり)や、周囲に柵(さく)をめぐらせた痕跡も見つかった。

 遺構の配置について斉藤学芸員は、東北で繰り返された朝廷と蝦夷の衝突など、当時の軍事的緊張の高まりを反映した、「防御性集落」である可能性を指摘する。

 斉藤学芸員は「本道が越度島(こしのわたりしま)と呼ばれたこの時代、擦文文化を築いた人々や蝦夷の実像は未解明だ。発掘を通じて実像に迫ることができれば」と話し、調査の成果に期待を寄せている。

 町教委は、昨年度から国の補助金を受けて、同遺跡の詳細分布調査を開始。昨年度は約200平方メートル、本年度は10月末までに約500平方メートルを対象に発掘を進めている。(松浦 純)

提供 - 函館新聞社



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