2003/10/30
大切に育ててくれる人はいませんか―。函館市新川町27の丸美屋旗幕店の店主、山崎悠子さん(61)が、亡き夫の輝一郎さんが大切にしていた金魚の「子供たち」のもらい手を探している。今年5月に約100匹が産まれ、既に半分は函館市立幼稚園などに寄付。残った約50匹についても「情操教育に役立てもらいたい」と幼稚園など子供のいる施設への寄贈を希望している。
昨年5月に他界した夫の輝一郎さんが大切にしていた金魚が今年5月に産卵。約100匹の稚魚が産まれ、寄贈を考えた。
輝一郎さんは、大の金魚好きで、1メートル×2メートルの大型水槽2つに70―80匹の金魚を飼っていた。中には、体長20センチ以上の、コイと間違えられるほど立派な金魚もいたという。知人などから譲ってほしいと頼まれることもあったが「娘を嫁にやるよりつらいといって絶対に人にあげなかった」(悠子さん)。
輝一郎さんが他界し、1人ではとても育てられないと思った悠子さんは、思い出に3匹だけを残し、残りは以前から欲しがっていた知人に水槽ごと譲った。輝一郎さんの思いを裏切る気もしたが、「大切に育ててもらったほうがいいのでは」と心を決めた。
3匹が泳ぐ水槽に卵を発見したのは、輝一郎さんが死んで1年が経った5月。放置すれば、親魚が卵を食べてしまう。「夫に育ててと言われた気がして」別の水槽に移し、育てることにした。
卵からふ化した約100匹の稚魚は元気に成長し、たくさんの小さな命は水槽の中をスイスイと泳ぎ回った。その光景を目にした悠子さんは「子供たちに小さな生き物を育てる大切を知ってほしい」と思い立ち、孫が通う幼稚園などに約50匹を寄贈した。
幼稚園で大切にされていることを聞くと、輝一郎さんとの思い出が増えていく気がしてうれしくなるという。「夫も今となっては、大切に育てくれる人にもらってほしいのでは」。
金魚についての問い合わせは同店TEL26・2570。(後藤泰良)
提供:函館新聞社
●ニュース一覧へ戻る