ワシリ遺跡で現地説明会

2003/10/26
 【上ノ国】上ノ国町汐吹の「ワシリ遺跡」を発掘調査している同町教委は25日、現地説明会を開いた。地元の小学生や考古学ファンら約60人が訪れ、本州との文化的交流を物語る遺構や土器を熱心に見入っていた。

 同遺跡では、日本海に突き出た台地を南北に隔てる長さ約40メートル、幅約7メートル、深さ約2・2メートルの空堀や土塁、周囲を囲む柵(さく)列が出土。住居跡とみられる遺構は見つかっていないが、同町教委は「平安時代に東北地方で出現した防御性集落と類似した遺構ではないか」と推定している。

 吊り耳を内面に取り付けた土鍋の一種、内耳土器(直径約30センチ)など本州の文化的影響を示唆する土器も出土している。

 台地上では、直径1・8―2・7メートルの複数の竪穴を発見。鉄の不純物が固まったスラグ、ふいごの先端で、溶けた鉄が付着した「羽口」も出土。同町教委は、鉄を溶かして加工する鍛冶(かじ)などが行われていた可能性も指摘している。

 出土した遺構や遺物は、土器の特徴や遺跡周辺に堆積(たいせき)する火山灰などから、擦文時代(約1300―900年前=本州の平安時代に相当)のものと推定される。

 同町教委の松崎水穂主任学芸員は「堀を備えた擦文時代の遺跡は、松前町の原口館と道路工事で失われた乙部町の小茂内遺跡の2例だけで貴重な存在。本州と類似した遺構や土器は、津軽海峡を挟む共通の文化圏や人々の交流があったと考えるのが自然だ」と話している。

 文化庁などの補助を受けて昨年度から民有地約400平方メートルを対象に詳細分布調査を開始。27日から遺構保存のため埋め戻し作業を始める。

提供:函館新聞社

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