吉田さんが松浦武四郎賞

update 2003/1/31 11:16

 日本聞き書き学会(神谷忠孝会長、事務局・札幌)が、優れた聞き書き作品を選ぶ公開選考会がこのほど札幌で開かれ、大賞の「松浦武四郎賞」に吉田幸子さん(58)=函館市昭和1=の作品「アイ子ばぁちゃんのはなし」が選ばれた。黒松内町の渋谷アイ子さん(88)から話を聞き、苦労を乗り越え、たくましく生きてきた渋谷さんの半生を丁寧に書き上げた。吉田さんにとっては初作品での大賞受賞。「アイ子おばあちゃんとの出会いにありがたい気持ちでいっぱい。おばあちゃんも私も輝かせてもらった」と喜びをかみしめている。

 聞き書きとは、人の話を聞いて文字に残す手法。同学会は聞き書きによって地域や人の歴史を掘り起こし、後世に伝えていくことを目的に活動している。吉田さんは今年度、同会主催の聞き書き講座「北海道聞き書き隊」に参加、初めて聞き書きに挑戦した。

 語り手の渋谷さんとは、「かんじきじいさん」として知られるアイ子さんの夫、吉尾さん(92)を通して出会った。サハリンから引き揚げ、貧しさの中で4人の子供を育て上げた渋谷さんの生きざまに触れ、聞き書きを願い出て、黒松内まで往復5時間をかけて毎週のように通い続けた。

 渋谷さんは寝たきりの生活を送っているが、「今度あんたが来たら、何を話すかと思うと楽しい」と話すほど吉田さんの訪問を心待ちにし、「目を輝かせて、次から次へとよどみなくしゃべってくれた」(吉田さん)という。

 「女の一生は感動的。私は人間、それもただの女の人を書きたかった。言葉を聞いていたのではなく、言葉を通して人を見ていた」(同)。渋谷さんとの会話はすべてテープに録音。60―70時間分にもなるテープを、方言や沈黙に至るまで丹念に文字におこし、不用な文章を削り、再構成して、150ページの原稿にまとめた。

 「アイ子ばぁちゃんのはなし」には、生い立ち、娘時代の奉公、結婚、出産、引き揚げ、黒松内での開拓生活などが、渋谷さんの語り言葉でつづられている。食生活や口寄などの生活様式、風習、長年連れ添った夫への思いなども描かれている。

 選考会には17作品の応募があり、このうち5作品が最終審査に進出。26日に公開で6人の審査員が協議し、大賞1作品を選んだ。

提供 - 函館新聞社



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