厚沢部に天然ガス田

update 2013/1/3 01:00


 厚沢部町に35年前の国の調査で存在が明らかになった天然ガス田がある。当時の報告で、全町民が使用して3000年分以上の埋蔵量が確認された。東日本大震災以降、多様なエネルギー源の確保が課題となっている中、渋田正己町長は「住民の暮らしと地域経済を守る上でも貴重な資源。国や専門機関に呼び掛けて、事業化につなげたい」と意欲を見せている。

 調査は1977年、当時の通産省が行い、同町東部の館盆地に埋蔵されていることが分かった。推計埋蔵量は23億3000万立方メートルで、当時の町民約2000世帯(7300人)が使用して「3000年以上賄える量である」と報告書にある。

 当時は道内最大級のガス田とみる動きがあったが、その後は調査活動が行われていない。道総研地質研究所(札幌)の八幡正弘資源環境部長(56)は「地下資源は埋蔵量の全てが実用化されるわけではない。安定的な生産量や採算などを考えると、国として重要視していなかった可能性が高い」と語る。

 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(東京)も「探鉱開発から生産販売までの流れは厳格。利益とリスク、輸入ガスの状況を踏まえると、一定の量があると把握しても、採算性を見極めた上での判断となる」とする。

 実現に向けたハードルは低くはないが、厚沢部のガス田は開発しやすい特徴がありそうだ。報告書によると、通常のガス田は地下2000〜3000メートルまで掘削が必要な中で、厚沢部の場合は1000メートル内で層に当たるといい、投資額が少なくて済む可能性がある。

 道内で事業化されている主なガス資源に、苫小牧の勇払ガス田がある。推計埋蔵量は約170億立方メートル(2009年「道内エネルギー資源・資料」)で、道内の埋蔵量の9割以上を占める。道南では長万部ガス田が1959年度から事業が始まった。長万部町によると、都市ガスとしての2010年の配給は7万7000立方メートルで、現在は半分に落ち込んでいるという。

 しかし、福島第一原発事故以降、わが国は多様なエネルギー源を確保することが急務。秋田県の油田では昨年、地下の岩盤にしみ込んだ油「シェールオイル」の試験採掘が行われ、日本近海に眠る氷のような天然ガス「メタンハイドレート」も注目されている。

 道総研地質研究所の八幡部長は、さらに踏み込んだ調査と開発事業費の課題を挙げた上で「道内や国内全体への供給は難しいだろうが、地域で使う分にはあり得るのでは」と語る。渋田町長も「町の重要課題の一つと認識している。各方面に働きかけ、次世代の暮らしに目を向けた事業展開を前向きに進めることができれば」と、さらなる検討を進める考えだ。

 調査から35年―。わが国のエネルギー自給率向上に貢献する資源が、道南にも眠っている。

 ◆「館盆地における天然ガス調査報告書」 厚沢部町が館盆地に石油と可燃性天然ガスの試掘鉱区を申請したのを受け、1977年に通商産業技官5人が調査し、水溶型ガスが埋蔵されていることを確認した。「(1000メートルほど地下の糠野部層(ぬかのぶそう)の部分が)水溶型ガス鉱床の形成に理想的な場と言える」とし、館盆地での天然ガスとガス付随水の存在を推定している。

提供 - 函館新聞社


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