救命技術を伝える田中さん、「AEDに点字」で実用新案に登録

2009/12/25
 地域で救命の知識や技術を広めるNPO法人「救命のリレー普及会」の田中正博会長がこのほど、視覚障害者が操作できるよう、AED(自動体外式除細動器)に点字を付けることを発案し、特許庁の実用新案に登録された。講習会で使う練習用AED4台に点字シールを付け、「1人でも多くの視覚障害者が知識を身につけたら救命の可能性も上がる。活動の輪を広げたい」と話している。

 同会は応急手当普及員の資格を持ち、10年ほど前から市内で救命講習会を開く田中さんら有資格者で2月に発足し、10月にNPO法人化した。障害者を対象にした講習会がほとんどない現状を受け、視覚障害者への技術指導をスタート。神奈川県の茅ヶ崎市消防本部が視覚障害者向けの救命講習用に点字テキストを作製していることを知ったのがきっかけだった。

 本格的な講習会を開く前に、視覚障害者の意見を聞くなどし、AEDの電源やショックを与えるボタンなどを点字で表示することを思いついた。6月1日に特許庁に出願し、11月11日に登録。既存のADEに張り付ける「点字シール」と、あらかじめ点字が打ち込まれたAEDが製造された場合を想定し、「点字ブロック」の2種類の案で登録を済ませた。田中さんは「もしメーカーなどに採用され、使用料が見込めるなら財団や基金をつくり活動に役立てたい」と実用化に期待を込める。

 併せて応急手当講習テキストや、実技用にテキストの内容を抜粋したもので、一連の流れを簡潔にまとめた資料なども点字版で作製。これまで函館視力障害者福祉協議会(函視協)の会員を対象に10月、12月に2回、講習会を開催した。松前町に住む全盲のマッサージ師の女性は、講習会の受講を機に、点字を付けたAEDを購入し、万が一の時に備えるという。

 田中さんによると、4月現在で市内の視力障害者の数は1051人で、このうち函視協会員は153人。「必要最低限の知識があれば、救命が必要な場面で健常者に指示を出すこともできる。函視協の会員の8、9割が知識や技術を身に付けられるような形にしたい」と意欲を見せる。



 【実用新案】物品の形状、構造または組み合わせに関するものを保護する権利。特許庁に出願し、登録する。登録期間は最長10年。

提供:函館新聞社

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