漂着クジラ、希少種と判明

update 2010/9/27 11:22

 函館市石崎町の砂浜に漂着したクジラの死骸(しがい)の解剖が26日、現地で行われ、調査の結果、世界的にも珍しいタイヘイヨウアカボウモドキと判明した。世界では十数頭が打ち上げられるなどして確認されており、日本では2例目。南の海に生息するクジラで、今後、分布域の見直しが迫られそうだ。

 調査は北大大学院の松石隆准教授が代表を務める「ストランディングネットワーク北海道(SNH)」が主体で実施。国立科学博物館(東京)から漂着鯨類研究の第一人者、山田格さんら研究員と北大鯨類研究会の学生が加わった。

 松石准教授らによると、クジラは「歯クジラのアカボウクジラ科」で体長6・19メートルの雌。頭部のほか、体色や体形などから種を特定した。インド洋や太平洋に分布し、ハワイ沖では数百頭が生息するが、「それでも世界的に生息数は少なく、生態も不明」(松石准教授)という。

 このクジラは2002年に見つかった鹿児島県が分布域の北限、東限とされていた。今回の発見で松石准教授は「なぜ函館に漂着したかは分からないが、今後分布域の見直しが必要になるのは確か」と話す。

 この日は午前8時半ごろから外部形体の測定や写真撮影などを行い、全身を解体。全身の骨格のほか、肉片や臓器などを取り出し、病変や汚染物質の有無などを調べた。目立った病変はないが、妊娠の形跡が見られたという。国立科学博物館の研究員、田島木綿子さんは死因について「流産や死産の可能性もある」と推測。山田さんは「人間ならおばあさんぐらいの年齢。衰弱して海をさまよっていたのでは」と話す。

 骨格は27日以降、国立科学博物館へ送り、臓器などは同大や愛媛大、日本鯨類研究所など国内の研究機関に送付し、詳細を調べる。希少種としての生態や死因などを明らかにし、保全対策などに役立てる考え。

 8年前、鹿児島に漂着したクジラを解剖した山田さんは「当時見つかった全身は死後1週間以上が経過し状態が悪かったが、今回は全身をくまなく調査できそう。一例一例データを積み重ね、この個体の生態が明らかになれば」と期待。松石准教授は「本当に驚いているが、我々専門家が現場で解剖、調査できて良かった。このクジラが死んでいたのは残念だが、今後の研究に役立てられることを思えば不幸中の幸い。クジラへの供養にもなるのでは」と話している。

提供 - 函館新聞社




前のページにもどる   ニュースをもっと読む



ご注意:
●掲載している各種情報は、著作権者の権利を侵さないよう配慮の上掲載されるか、又は、各情報提供元の承諾の元に掲載されています。情報の閲覧及び利用については「免責事項」をよくお読み頂いた上で、承諾の上行って下さい。
●掲載中の情報の中には現在有効ではない情報が含まれる場合があります。内容についてはよくご確認下さい。

ページ先頭へ

e-HAKODATE .com
e-HAKODATEは、函館市道南の地域情報や函館地図、旅行観光情報、検索エンジンなど、函館道南のための地域ポータルサイトです