集団暴行死から1年、再発防止 地域も苦悩

2008/8/26
 函館市内の私立高校3年の男子生徒(当時18)が中学時代の同級生ら少年7人から暴行を受け、死亡した事件から26日で1年を迎えた。平穏な日常の中で起きた悲惨な事件は、いじめの撲滅や命の尊さを教えてきた教育関係者のみならず、発生現場となった地域住民らに衝撃を与え、重い課題を残した。事件後、再発防止に向けて地元の防犯団体は巡回活動を強化するなどの取り組みを続けている。しかし、その担い手の多くは、高齢化が著しい町会のメンバーや少年補導員たちだ。彼らは「『何とかしなければ』という思いがある一方で、体力に限界があり思った通りに活動できない」というもどかしさを抱えながら、再発防止の道を模索している。

 凶行の現場となった同市昭和町20にある昭和公園。付近は閑静な住宅街で夜間になると人通りは少ない。亀田港町会では、1983年から毎月継続している防犯パトロールの巡回コースに事件後、同公園を加えた。松前律夫防犯部長は「事件が起きた状況をきちんと確認し、二度と同じことが起きないよう対策を講じたい」と強調する。

 同町会と函館西署が合同で実施した公園の防犯点検では、風よけ目的で植えられている木が死角となっているため、道路沿いから園内の様子がよく確認できないことや、成長した木の枝が照明を覆い、夜間、園内に十分な明かりが届かないことが判明した。松前部長は「もし、照明がきちんと機能し、公園内の様子が外から確認できていたら、悲惨な事件は防げたかもしれない」と悔しがる。

 同町会は公園の改善点を函館市に申し入れ、市は照明周辺の伐採を行った。7月には市道側の樹木の下枝のせん定を行い、外側からの視界を確保した。

 函館西署少年補導員連絡協議会北部地区(生田正子会長)も、少年らが起こした事件を重く受け止め、公園の巡回など活動を活発化させた。生田会長は「『地域の大人が目を光らせている』ということをアピールすることが、非行や犯罪から子どもを守ることにつながる」とする。今後は夜遅い時間帯の巡回も検討中だ。

 ただ、これらの活動を支えているのは高齢者で、ボランティア活動にも限界がある。この状況は、現場となった公園周辺だけに突きつけられた課題ではない。ひと昔前は地域や学校、家庭がそれぞれの役割の中で協力し合い、互いの顔が見える地域コミュニティーがあった。関係者の思いは事件の再発防止だけではなく、「地域の再生」にもつながっている。同町会の坂本有隣会長は「現在の態勢では体力的制約から行動も限られる。若い人を町会に取り込み、地域の活動に巻きこんでいくことが重要だ」と話した。

提供:函館新聞社

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