「潜在自然植生」生かして 上ノ国町のグリーンベルト構想

update 2007/1/31 12:23

 【上ノ国】25日に推進協議会が発足した上ノ国町の日本海グリーンベルト構想―。従来の植林事業の常識を破り「潜在自然植生」と呼ぶ、植物の自生力を生かし、半世紀という長い時間をかけて森林の回復を目指すユニークな取り組みだ。

 「潜在地域植生」は、宮脇昭・横浜国立大名誉教授が提唱。自然環境に根差した強い樹木を選んで植樹や種子を植えることで「本物の森林」の回復を図る手法だ。

 同町は、下沢孝桧山森づくりセンター所長が見いだした、この地域の潜在地域植生とされるカシワの種子(ドングリ)と、種子から育てる苗木を、荒れた海岸沿いの台地に植える。周辺の希少植物などに配慮して、現地に生い茂る数十センチのササを1・5メートル幅で刈り、ドングリは1000平方メートルに3000個、苗は1000本の割合で手作業で植える。両側のササは風よけとして残してカシワを守る。ササの背丈を超えたカシワは風雪にさらされ成長は鈍るが、厳しい気候に耐える丈夫な森になる。植栽は20年、森が育つには50年を要する壮大な構想だ。

 事業は2026年までの20年間にわたり町ぐるみで推進。学校教育や住民活動に取り込み、町民の環境意識や自治意識、郷土愛を盛り上げたい考えだ。

 これまで、海岸地域の森林造成は、苗木を守る防風さくや垣根が欠かせなかった。風雪にさらされる同町沿岸では技術的なハードルも高い。「日本海沿岸での植樹は誰もが必要性を認めていたが、膨大な予算を要する難題を前に誰も着手できなかった」(下沢所長)。同町は厳しい財政事情の中でも、長期にわたり実現可能なアイデアを模索。カシワが持つ自然の力を生かした同構想の実現に踏み出した。

 推進協には、ひやま漁協上ノ国支所所属の漁業者約30人が加盟。初会合では「農林業者との連携を深めて陸海一体の取り組みとすべきだ」「事業を通じて山や海の環境を良くする運動の引き金にしよう」と活発な議論が交わされた。同漁協の市山亮悦組合長は「恋人である森と海を結ぶきずなが切れかかっている。黒潮と親潮がぶつかる、世界有数の好漁場でありながら漁獲量の減少は深刻。気付いた時に着手しなければ後世に汚点を残す」と力説する。

 工藤昇町長も「ドングリ拾いからすべて人力で行う事業。町民の全員野球でなければ実現できない。桧山から日本海沿岸の全市町村に構想を発信したい」と意欲を見せる。

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