市史編さん室編集員の故・清水恵さん著作集出版

2005/12/31
  日ロ漁業や歴史群像伝える

 函館市史編さん室編集員で、昨年10月にがんで亡くなった清水恵さん(享年45)の著作集「函館・ロシア その交流の軌跡」がこのほど、函館日ロ交流史研究会(長谷部一弘代表世話人)から出版された。日ロ漁業史や亡命ロシア人の足跡などの歴史群像を伝え、清水さんの業績や問題意識の変化などが読み取れる。

 清水さんは1959年、北檜山町に生まれ、北大文学部英文科を卒業後、函館市入り。85年に当時の市史編さん事務局に配属された。日本の史料だけでなく、米英の在函館領事報告書などの英文翻訳業務が大きな比重を増していた中で、清水さんの語学力に周囲は大きな期待を持っていたと、菅原繁昭市史編さん室長はあとがきで述べている。

 「いずれは研究内容を集大成したい」と願っていた清水さんだが、2004年1月、病魔に倒れた。心の整理などが難しい中、10カ月間の闘病生活中も執筆活動を続けた。清水さんや菅原室長が入会している函館日ロ交流史研究会が、闘病中の著作も含め40本の論考を1冊にまとめた。

 第1章「函館とロシア、交流の諸相」では、1859年に実行寺境内に初めて根を下ろしたロシア正教会の初代司祭についての論考や、戦時中の函館ソ連領事館の諜報(ちょうほう)活動など、世相を背景にした日ロ関係の様子を紹介している。

 第2章の「露領漁業と函館」は、樺太千島交換条約と明治政府の対応、函館とロシア・ソ連漁業など5編を収録した。第3章の「来日ロシア人の足跡」は、ロシア革命の亡命者や函館在住ロシア人の人物録。文献以外に遺族からの聞き取り調査などを進めた。函館大火で被災したロシア人や、大正末期から昭和初期に湯川にロシア人集落があったことなどを伝えている。

 病床で清水さんは、夫の正司さん(48)に「いろいろな史料を読み、知識が蓄積され、これから体系化していく時期なのに残念」と涙ぐんだという。

 発行した同協会は「論考からは、今後の国際交流の在り方への願いなども表れている。清水さんの業績をぜひ多くの市民の方に知ってもらいたい」と話している。

 四六判、387ページ。2000円。650冊を出版し、市内駒場町の浪月堂書店(TEL0138・32・3479)で取り扱っている。

提供:函館新聞社

ニュース一覧へ戻る



函館ニュースヘッドライン



(C)e-HAKODATE