つち音響く北海道新幹線・〈5〉/地域活性、将来見据えた戦略必要

update 2005/5/28 12:10

 「前任の本部長が強引に押し切ってくれ、こうして函館に来ることができた。スタッフも最強の布陣を敷いた。何とぞ協力をお願いしたい」

 損保業界で、函館に初めて支店規模の組織を置いた損保ジャパン函館総合支社。4月、市内のホテルで開かれた移転祝賀会で、出席した代理店主に対し、主催者は並々ならぬ決意を語った。

 約7000億円を投じた青函トンネル以来の「スーパー公共工事」。工事関係者に限らず、さまざまな業界が道南に熱い視線を送り始めている。

 損保ジャパンは、新幹線着工にかかわる工事関連保険の売り上げを見込んで進出。札幌からの移転を機に、顧客の新規開拓部門を拡充した。開業を待たずして新幹線への期待は大きい。

 大野町と合併を控える上磯町に、新規出店した北洋銀行は「効果は未知数だが(上磯町は)人口増などが大きな魅力。手を挙げない理由はない」と、効果を認める。

 地元の企業も、新幹線特需にあやかろうと必死だ。新函館―新青森間にかかる建設工事の総事業費は4700億円。北洋銀行の試算では、同区間建設に関連する道内への投資額を2698億円と見込む。

 3月、函館の土木建設関連の企業などが「道新幹線建設協力会」を発足。地元での受注獲得にスクラムを組んだ。

 事務局となる函館商工会議所は「最終的には個々の企業の営業努力だが、分散して陳情に行っても効果は薄い。協力会が団結して、地元企業を使ってもらうよう働きかける」と話す。

 こうした盛り上がりの中、厳しい見方も依然消えない。「今の時点でも、札幌の企業にほとんど食われているらしい。道南に金が落ちるといっても、札幌延伸を前に、早くも一極(札幌)集中じゃないか」。函館市内で電気工事業を営む男性は嘆く。

 長い歴史に裏付けされるかように、地元依存型の企業経営が指摘されてきた道南。札幌まで45分、東京から3時間40分。新幹線による移動距離の短縮は、ビジネスチャンスとともに、他地域との競争激化を生む。

 同会議所の高野洋蔵会頭も「新幹線建設に参加する責任は重い。建設資材は、質の良さが問われる。本州企業とのさまざまな競合も予想される」と、地元企業の体力を懸念し、気を引き締める。

 「新幹線は、ただの舞台装置に過ぎない。どんなシナリオを描き、舞台上でどう演じるかが課題。道南活性化という共通の志を持ち、一致団結することが必要だ」。同会議所青年部の折谷泉会長は、将来を見据えた戦略の必要性を指摘する。

 道南経済活性化の起爆剤として期待される新幹線。着工や開業効果を余すところなく生かす知恵と努力の結集が求められている。

提供 - 函館新聞社



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