クジラの行方(上)

2005/3/2
 「近海でのツチクジラ漁の割り当てなどから、これまでにないぐらい鯨肉の取扱量は増えてきた」。鯨肉の普及を進める「函館くじら普及協議会」の藤原厚会長はそう言って、鯨肉の取扱量の増加を歓迎する。

 函館市内で出回る水産物を扱う函館市水産物地方卸売市場(函館市豊川町)の鯨肉取扱量は、ここ数年で大幅に上向いた。きっかけは、1999年度から始まったツチクジラ漁。ツチクジラは、国際捕鯨委員会(IWC)の管理を受けない種類の歯鯨。国の管理下にあるが、函館にはクジラを取り扱う体制が整っていることもあり、同年度から一定頭数の漁が認められるようになった。

 98年度までゼロに近かった取扱量は、99年度には2トンに。2002年度から04年度までは、年によって変動はあるが、20トンを超すようになった。

 ツチクジラの卸値は1キロ当たり平均2000円で、調査捕鯨などで捕獲されるミンククジラに比べ、ほぼ半値で取引される。漁期は5―6月で、これまでの割り当て頭数は毎年8頭。平均6―7トンの鯨肉が、季節物として市場に出回っている。

 函館自由市場(同市新川町)の鮮魚店によると、「旬の食材として、料理店や年配者が購入する」という。

 さらに01年には、報告書やDNA標本を国に提出することなどを条件に、定置網に偶然入り込んだひげ鯨の販売も許可された。同市場にもほぼ毎年、函館市や近郊の沿岸からミンククジラなどが年間数頭水揚げされている。

 こうした中、04年3月には、鯨類資源の調査などを進める日本鯨類研究所(東京)の調査捕鯨船団(第17回南極海産ミンククジラ捕鯨調査船団)が函館港に初入港。調査副産物として水揚げされたミンククジラ440頭分の鯨肉1900トンのうち、6トンの冷凍肉を同市場でも仕入れた。

 02年度から始まった釧路沖の鯨類捕獲調査の影響も大きい。調査期間は5カ年で、宮城県牡鹿(おしか)町と2カ所で実施。釧路では初年度50頭、04年度に60頭のミンククジラの枠が設けられ、04年度には2・5トンの生肉が函館の市場にも卸された。

 かつての捕鯨基地・函館に、鯨肉“復権”の兆しが見え始めた。

                     宗 ・・旬r

 函館地方水産物卸売市場での取扱量が増加する鯨肉。しかし、消費者意識は追いついておらず、“だぶつき”始めている。函館の鯨肉事情の現状と課題を探った。

提供:函館新聞社

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