貧栄養化、磯焼け防止にイカゴロなどの「海中施肥」を検討

update 2005/1/22 13:35

 【上ノ国】桧山管内沿岸の貧栄養化や磯焼けによる漁業資源減少に悩む、上ノ国町など沿岸8町は、水産加工場で生じるイカやスケトウダラの内蔵や頭部を肥料として海中に還元、豊かな海を取り戻そうと、新年度に向けて具体策の検討に入る方針だ。

 海洋汚染の代名詞「赤潮」。廃水中の栄養分を餌にプランクトンが異常発生する現象で、富栄養化と呼ばれる。

 これに対して桧山沿岸では、プランクトンや海藻を育てる栄養が減る「貧栄養化」が進行。「太平洋よりスケトウダラの成長が約1年遅いとのデータもある」(桧山支庁)。前浜では、海藻類が消え、岩の表面が石灰化する「磯焼け」も深刻だ。漁業関係者は、貧栄養化や磯焼けで「食物連鎖の輪に従い、沿岸全域で漁業資源の減少が進んでいる」と悩む。

 上ノ国町など8町は昨年10月、イカの内蔵(イカゴロ)や頭部などを海中に還元、貧栄養化などに歯止めをかけようと、国に構造改革特区の申請を行った。だが、海洋汚染防止法などが壁となり却下。「国は廃棄物対策が背景にあると警戒した」(同支庁)。

 沿岸8町は「施肥」の考え方で国に再検討を求めた。畑に肥料を施すのと同様、海に不足する栄養分を補うという主張だ。

 今月11日に示された再回答は、廃棄物の投棄は認めないが「漁業生産のための行為であれば規制は適用されない」。特区として対応しないが、環境に配慮した上で「適正な方法を検討すべき」との答えだった。

 国の回答に、申請の中心となった、上ノ国町の工藤昇町長は「イカやスケトウダラなど回遊魚をメーンにした漁業は厳しい。ヒラメなど前浜の資源を回復させ、経営安定や漁業者の高齢化にも対応したい」と力説。町が検討中の行財政や産業構造の改革に向けた「自立プラン」の一環にも位置付け、実現を目指す考えだ。

 だが、実現に向けたハードルは高い。国の解釈では、全国で漁業系廃棄物の海洋投棄に抜け道を与えかねないからだ。「施肥はあくまで貧栄養化という管内固有の事情によるもの。ルール作りを含め議論が必要」(同支庁)な状況だ。

 イカゴロなどの投入方法や体制、浮遊物や油分が海を汚染しないか、イカゴロに含まれるカドミウムが環境に与える影響の有無、効果の把握・評価手法―など、科学的検証や関係省庁との協議を要する課題も山積している。

 沿岸8町は、漁協などの関係機関を交えて、実施方法を話し合う「連絡会議」を早期に設置したい意向だ。上ノ国町は「可能であれば新年度から試験プロジェクト着手など行動に移りたい」(工藤町長)とし、今後の取り組みに強い期待感を示している。

提供 - 函館新聞社



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