朝鮮人労働者の冥福祈る、専念寺で法要

2012/5/4
 【松前】戦前から戦時中にかけ旧国鉄松前線建設工事に従事させられて亡くなった朝鮮人労働者を追悼する「殉難者慰霊法要」が憲法記念日の3日、町唐津の専念寺(福島憲成住職)で営まれた。参列者らは、千人を超すともいわれる犠牲者の無念を思いながら、あらためて不戦と平和を誓い合った。

 旧松前線は軍需物資の運搬を目的に戦前から工事が始まり、朝鮮人らが従事させられた。厳しい自然環境の中、過酷な労働を強いられ、多くの人が命を落としたという。犠牲者の正確な数は分かっていない。同線は1953(昭和28)年に全線が開通。88(同63)年に廃止されるまで35年間、沿線住民らが利用してきた。

 慰霊法要は、同寺の境内に慰霊碑が建立された85年から地域住民有志の運営委員会が毎年開いており、28回目を数える。例年は慰霊碑の前で行っているが、この日はあいにくの雨で、参列した在日韓国、朝鮮人や地域住民ら約50人が本堂で静かに手を合わせた。

 石山英雄町長が「家族や友人と離れ、工事の完成を見ることなく殉難されたことはまことに痛ましく、慰めの言葉もありません」と追悼の言葉を述べた。松前仏教会の僧侶10人が読経する中、参列者が一人ずつ焼香し、手を合わせ犠牲者の冥福を祈った。

 法要に参列した在日本大韓民国民団函館支部の崔千浩(チェ・チョンホ)支団長(63)は「不幸な歴史の一つではあるが、今も地域住民や松前仏教会が供養し続けていることに感謝したい。名簿で名前が分かる犠牲者については、韓国サイドに働きかけて確認できれば」と話していた。

提供:函館新聞社

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